ミレニアム・Xmas・in Tokyo No.1

ジョシュア剣心とさのすけは大勢の人でごった返す渋谷の街を歩いていた。
クリスマスも近い土曜日の夜。
街も人々もクリスマスムード一色という感じで、
その賑わいの中にいるのをふたりは満足しながらも、
人をかきわけかきわけ歩くのに少々疲れ気味。
ジョシュアはしっかりとさのの腕ににしがみついている。

「さのお…日本のクリスマスってなんかスゴイね…
キリスト教信仰の国じゃないのに…」
「そ〜だな〜。単にお祭り好きっていうか…こう、季節やイベントごとに
いちいち「セール」だの「プレゼント」だのとかカコつけて、儲けようと必死になるんだよな。
ケーキ屋やおもちゃ屋なんかは12月の売り上げが年間で一番だっていうんだから、
しょうがねえなあ。」
「ふ〜ん…。アメリカでもスゴい盛り上がりだけど、ちょっと違うカンジ…
ここまで商売っけが無いというか…でもラスベガスのホテルでも 
でっかいツリーのイルミネーションとか飾るよ。スタッフも皆、サンタ色になる。
カクテルレディたちもサンタスタイルのミニスカートや帽子でカワイくなるんだ」
「へえ〜!い〜な〜♪ミニスカート…いっひっひ♪」と、さのすけはにやつきながら語る。
「剣心もか?サンタ服かあ?(笑)」
「…トナカイの角つけたりするんだよ…」
「あっはっは!い〜ね〜それも!」
「笑うなよ!けっこう恥ずかしいんだぞ」
「あはは!笑ってんじゃネエよ。カワイイ姿を想像して喜んでるんだからサ!」
「笑ってるじゃないか!チッ!」と
ジョシュアはさのを睨み付けるようにして笑った。


「あ!ほら。ここにも貼ってあるよ、さの!」
そこにはさのすけと剣心が一緒に写っているクリスマスポスターが貼ってあった。
駆け出し俳優のさのすけは、前回の芝居であるプロデューサーに目を付けられ、
この冬メンズファッションメーカーのポスターに起用された。
その撮影の日に剣心を連れて行ったのだが、その時その場にいた全員が
剣心の魅力に悩殺されてしまった。
大きな瞳をした、みつあみの異国の少女…とでも思ったのだろう。
スタイリングスタッフはあれこれと剣心に服を着せたがり、メイクスタッフは、
「かっわい〜!この目の色!金色のまつ毛!髪!染めてないんだもんね〜!
男の子?信じらんな〜い!」と
どんどんメイクをほどこし、左頬の十字傷もキレイに隠されて紅まで
塗られた。
実際、ハーフのジョシュア剣心は、仕上がってみると中性的なあぶなっかしい美貌で、
そりゃあ美しかった。
ハーフ独特の、日本人好みの容貌に少々キツめなまなざしが、
男性にも女性にもウケること間違いナシだった。

さのはさので今年流行の黒いレザーのジャケット&パンツで、さのすけの長い脚を
更に長く見せるいでたちだ。
高い身長から見下ろすような、少しケダるい視線を向けるさのに、
「コレはオレんだ!」の目つきをした剣心がその腰に腕を巻き付けている。
そしてさのすけの手は剣心の長い茶髪をもて遊んでいる、というポーズだった。
「いいね。このふたりの対照的なカンジ!こんなポスターどこにも無いよ。OKだ!」と
スポンサーにも一発で気に入られてしまった。
少々苦笑いをしながらも、いい仕事の出来たふたりはにっこりと微笑みあった。
そこをすかさずカメラマンに撮られて、
「い〜な〜、い〜よ、君たち!」と喜ばれてしまった。
  イイに決まってるゼ。
  オレ達はホンモノなんだからな。
だからこの渋谷を歩いていても、実はチラチラ人目を引く、目立つカップル(笑)であるのを、
当のふたりは全く気がついていなかった。



「ねえ。早くハンズへ行こうよ」
「向かってるじゃネエか!必ず買ってやるって」
ハンズは剣心のお気に入りだった。
特にホビーコーナーのジグソーパズルの山は剣心にとって天国だった。
さすがにフスマ一枚も分もある一万ピースのジグソーはダメ!と言われたのだが、
小さいものなら買っていいとお許しがでたので、今日そのハンズでジグソーを買うのだ!

ジョシュア剣心が日本に来て一ヶ月。
楽しく楽しく日々を過ごしていた。
見るモノ、聞くモノ、食べるモノ、剣心にとっては心が躍る事ばかりだ。
日本語の勉強をする為に邦画のビデオを借りたり、(ヤクザものがお気に入り)
メル友を作って日本語でメッセージを交換したり、天丼やおそばにもチャレンジして、
おはしが使えるようになった。
そんな剣心を、さのは心も身体も包み込むように愛した。
そして剣心もそれに応えて、さのを喜ばせていた。

  「狭いアパートですが元気に暮らしています。
   ねえ、ヒコ。
   ヒコの国、ママの国はとてもステキです。
   楽しい楽しい毎日です。」

ジョシュアはそんなカードをラスベガスにいるヒコへ送った。
   こんなポスターを見たら、ヒコは怒るだろうか?
   このバカ息子!と、呆れるだろうか?…

そのポスターに書かれてある「Mery Christmas」を剣心は口に出して言う。
「ん?なんだ?」と
さのすけが剣心の口元に耳を寄せるようにしてかがみこむ。
「I love you、さの…」と、
剣心はさのすけの頬にそっと口付けた。
   

   Mery Christmas! ”SUCCESS” のお二人サンへ♪ 城みづき