朱色の雪

外は雪が散らついていた。
少々積もっているようだ。
全ての音を消している。
ふたりの逢瀬もその白いベールに隠して…



「何も聞こえませんね…」
「ああ…いいな」
「ん?いいんですか?こんなに静かなのがお好きでしたか?」
「…良い句が作れそうだ…」
「ぶ!辞めてくださいよ。こんな折角ふたりきりでいられる夜なのに…
ね…俳句より…でしょう?土方さん…」

総司の腕が歳三に絡む。
細くなってしまった腕…
一瞬総司の心が凍りつく。
前線から離れていて、すっかりと腕の筋肉も落ちてしまった。
けれどもそんなコトを気にしているよりも、こうしてふたりだけでいられる時間が惜しくて
思いっきり抱きつく。
歳三もそんな総司を力強く抱きしめた。


此処は土方の「休息所」である。
と言っても女を囲う為に用意したものではない。
総司との逢引場所として借りている小さな屋敷だ。
畳部屋がふたつほど。小さな内風呂。
台所なども粗末な作りだが、酒を少々燗したり湯を沸かしたりの程度であるから
充分に賄える。
掃除なども土方が自らやっている。
家具などもない。
有るのは刀掛け、衣桁、そして一組の夜具。
その夜具にふたりで暖を取りながら、包まっている。
屯所の喧騒を避けて、ふたりきりで逢瀬を楽しむには
充分すぎる空間だと、満足していた。

「ずっと…こういう時間をお前と過ごしていられたらいいだろうな…」
「はい…」
「新撰組の事など忘れて…な。
実際、此処に居る時には忘れてしまっているけどな」
「でもあなたは行ってしまうんですものね。
私を置いて」
「そんなこた、ネエぞ?
オレのここんとこにいつもお前が居るからな」
歳三は胸をちょんと指差す。
そして笑った。
総司は嬉しくなって、こちらも満面の笑みだ。
「私の、ここにも…
土方さんがいっぱい欲しいんです…」

総司が着物の裾をめくる。
露になった大腿。細い脛…
そして…
「お?下帯付けてないのか?」
「だってすぐに外してしまうでしょう?
だったら最初から穿いて行かなくてもいいやって思って…」
「おい…!そんなことしたら風邪ひくぞ?
外は雪だったじゃねえか!」
「もう…すぐ怒る…!
いいじゃないですか…同じなんだから…ね…
穿いていないほうがお好きでしょう?くす♪」

総司は身体ごと歳三にぶつかっていった。
歳三が総司の身体を抱きとめて、布団の上に倒れた。
下になった歳三を、上からじっと見つめる総司。
「綺麗な人ですね…土方さんって」
「そりゃあ女へ言う言葉じゃないか?」
「だって本当に綺麗だと思うんだもの…
私の恋人はほんとにキレイ〜」
「そうか?お前もなかなかだと思うぜ?」
「ふふ…そんなこと言ってももう逃げられませんよ。
これからあなたは私に喰われてしまうのですよ…
お覚悟を…!」
「いいぜ…お前になら本望だ…」
歳三はゆっくりと目を閉じた。

総司はその瞼に、そっと口付ける。
そしてその唇が歳三の首に当てられる。
総司の、熱い息がかかって、それは扇情的だった。
身体の奥から湧き上がってくる情熱。
総司への想い。
総司への欲望。
くらくらしそうな期待に歳三は胸が躍る。

総司はゆっくりと歳三の首筋を舐め上げる。
長い黒髪が頬にかかる。
その髪を掴んで、歳三はゆっくりと口に噛んだ。
その行為をしている歳三の目を覗き込む。
潤んで、これからの情熱の一端を垣間見せられるようで、総司はぞくぞくとした。

「土方さんってば…髪を食べるご趣味があったんですか?」
「くく…そうだぜ。お前の髪専門だがね」
「ふふ…素敵です、その、目…ああ…」
総司が身悶えた。
「なんだ?お前、髪の毛でも感じるのか?」
「だって…土方さんの唇見ていたら…あ…」
「髪だけじゃないぜ?ほら…」
もう一方の手で、総司の秘所を探った。
「ここも…いいんだろ?」
「土方さん専用ですから…そこは…あ…!」
総司は歳三の胸に倒れた。
もう腕で自分を支えていられないほど、下半身が疼いてたまらない。
「舐めてやる…出しな」
総司は着ているものをすっかりと脱ぐと、歳三の正面に身体を開く。
歳三はその総司の股間に顔を埋める。
そして、総司を優しく握りしめると、そっと口に含んだ。
「ああ!や…土方さん」
「何がヤだ…もうすっかりと勃っているじゃねえか…」
ゆっくりと舐め上げられながら、総司はそっと腰を動かす。
「ああ…いい…ねえ、もっと…」
歳三は得たりと、その動きを早め、舌を思いっきり使う。
「あ!もう、もう!土方…さん!」
そして歳三はゆっくりと総司の足を広げて…
「早く…土方さん!」
「総司…!」



外の雪は音も無く降り続いている。
何も聞こえない。
ふたりの熱い息使いだけだ。
だがこの夜も、
新撰組二番隊が、長州藩士を捉えて、殺傷していた。
地面に広がる朱い飛沫。

「ひじ…かたさん!」
歳三の荒い行為に耐え切れず目を閉じる。
閉じた総司の目に見えたのは
そんな、敵が流す血飛沫。
そして自分の胸から噴出した血。

朱い朱い雪だった。
  


   私は…
   白い白い雪になりたい…
   朱の雪なんて嫌だ…
     そっとあなたの肩に落ちて
     そしてゆっくりと消えていけたらいいのに…
     そんな死が…本望…



  もう…
  これ以上の朱はたくさんだ…  

総司はあわてて目を開ける。
目の前にはりりしい男が微笑んでいた。

この、愛しいひとだけ見て生きよう…
最後まで、このひとだけ…


外はまだ雪が降り続いている。
どうかこのまま…
幸福の時が少しでも長く続くように…
その為なら…と
お互いの心の中で思う。

総司は再び その愛しい男に抱き寄せられた。





なんてことない作品ですけど
愛がいっぱいこもっています〜♪
うちの土方さんは、総司との時間の為に、休息所持ってるんだ〜♪
スゴイでしょう?
ふたりが休息所に居る間に屯所で何か起きたら大変ですって?
そういう時にはケータイで呼べばいいの。
あ、でもきっと電源OFFだわね。
だからふたりを、そっとしておいてあげてね。
せめて、こんな雪の夜くらい…


             城みづき   雪の日に