好き・・の気持ちと腹の虫。−ONE SUMMER DAY−



(蝉時雨(せみしぐれ)・・・もうそろそろ終わりかな・・。
 ツクツクボウシが聞こえる・・)

そう思ったのは、薫殿たちが出稽古に出てしまい、やる事もなく外を眺めていた
ある晩夏の日。
もう秋が近いことを感じながら、縁側に座り込み、
干し終えた洗濯物が風に吹かれて波打つのを見ていた。
こうしていると、時間の感覚が無くなっていくようだった。
空には大きな雲の峰・・。これが鰯雲(いわしぐも)になる日もそう遠くないだろう・・・。

時間の流れは早いものだな・・。
ついこの間、皆で桜花見を楽しんだような気がして、一人苦笑した。


ガタン・・・。

道場の裏手の方から誰かの入ってきた音がして、ハッとする。
こんな白昼に泥棒か・・。
そして相手の気配を探り、にわかに安堵する。
明るくて真っ直ぐな、若い気。この気配は―。

「よお剣心!」

へらへらと笑いながら視界に現われたのは剣心の予想通りの人物だった。
自由気ままにふら付くトリ頭、もとい、青年・左之助だ。
少し日焼けした顔に、白い歯を見せながらこっちに向かってくる。
そんな表情がいいと思う。
本当に若々しくて、左之助らしくて・・・。
この時間帯から察して、どうせまたただ飯食らいにやってきたのだろう。

「剣心〜飯食いてえ」

ホラきた。いつものことだ。
ほとんど毎日、こうしてひょこひょことやってきては、飯をせがむ。
(まあ拙者も人のことは言えぬでござるが;一応道場の家事をしているという事で
許してもらえるでござろうか<苦笑)
たまに赤べこの妙殿のところにも現れるようなのだが・・。
にしても今日は来るのが少し遅い。
もう昼飯時には少しばかり遅い刻限だ。

「無理でござる左之。薫殿の了解無しでは勝手に台所は使えないでござるよ♪」

と、ちょっと意地悪く言ってやってみたり・・。すると左之も負けない。

「頼むって剣心〜俺腹減って今にも死にそう・・。」

いかにもひもじそうに訴えてくる左之を見て少し同情しそうになったが・・

「拙者に頼んだところで、この家に飯はもうないでござるよ。
先刻薫殿と弥彦と拙者で食べきってしまったでござるから・・」

と、言い返す。本当のことなのだ。
今日は昼時になっても左之助が現れないので、弥彦と薫殿が左之助の分も
食べてしまったのだった。

「左之死んじゃう〜・・」

「ああっ、死んではいかんよ左之;;」

―後で聞いた話だが、左之はダチとの賭け事に躍起になってしまい
昨日の昼から何も食っていなかったらしい。
どうりで昨日は来なかったわけだ。



           ☆        ☆        ☆

チリー・・ン

頭上で、金魚の泳ぐ様を鮮やかに描いてある風鈴が鳴った。
一月ほど前、薫が浅草で買った物だった。

儚い音だけど、とても澄んでいて綺麗な音だと剣心は思っていた。

剣心はふと、隣に座り込んでいる男の顔を見た。

(そういえば、左之も同じ物を買ったんだっけ・・・。ちゃんと飾ってるのかな・・・)

そう思っていると、左之助と目があった。

「俺もあれ、ちゃんと長屋に飾ってあるぜ。結構いい音だよな。」

ニッと笑って、風鈴を指差してそういった。
心中をよまれたようだと少し苦笑しつつ、剣心は少し眩しそうに晴天の空を見上げた。
先程の雲の峰も幾分形を変えて、相変わらずどでんと空に構えている。

「よく晴れている・・洗濯物はもう乾いてるかもしれぬな・・。」



残暑の日差しに照らされた剣心の白い肌は、その日差しに負けない程眩しく綺麗だった。

気持ちよさそうに瞳を閉じ、日の光を一身に浴びている様はひどく幻想的でもあった。

そんな彼を何気なく見遣っていた左之助は思う。

(綺麗だよなあ・・・)―と。

(男に綺麗なんて言葉変かもしんねえが、剣心にはぴったりだ。
俺から見りゃぁその辺の女よか美人だぜ・・間違っても穣ちゃんにゃ言えねえがよ・・・)

そう一人頷いていると剣心は再び俺の横に坐りこんだ。

「何を一人で頷いているのだ、左之?」

大きな瞳。長い睫毛・・・。そして少し中性的な、柔らかな声。

(そうそう、女だったら間違いなく速攻告って、んでもって絶対襲って・・・)

「・・・左之・・?暑いから呆けてるのでござるか?」

少し左之助の顔を覗き込んでみる剣心。

(いや、ちょっと待て・・そ・・そ・・・そんなに近づかれると・・)

左之助には剣心の周りに華が咲いている様に見えるのだ。

「・・左之??」

少し心配しつつ更に顔を近づけてくる剣心。

(やばい・・・こりゃあマジで・・男のり・・理性が・・)

本当に心配そうに俺に何かを言っているお前の姿・・眼に焼き付いていくようだ・・・。

「返事して〜・・・左之お・・」

チリ―・・・ン

(か・・・かわいい・・)

              

左之助はふいに剣心の細腕をギュっと掴み、少し熱にうかされた様な顔で彼を見つめる。
その視線はひどく熱く、真剣でもあり・・・。

剣心はというと、突然の左之助の豹変振りに驚きを隠せないでいた。

「さっ・・左之!?どうしたでござる?」

「剣心・・・お前が欲しい・・。」

「せ・・拙者が欲しいって・・。拙者左之に差し出すような物何もないでござるよ?」

左之助の言った言葉の意味が分からずおろおろとする剣心。

両腕を強く掴まれ左之助と向き合う形で動きを封じられた彼は少し逃げ腰になっていた。
こんなに近くで左之助の顔を見るのが恥ずかしいと言った感じに・・。


左之助はそんな事はちっともおかまいなしに少し赤らんでいる剣心の顔に
更に己が顔を近づける。
そしてにわかに剣心の身体を押し倒して、逃げられないように両の腕で剣心を囲ってしまった。
小柄な剣心はすっぽり左之助に包みこまれてしまった。

「や・・左之っ・・!?どうしたのでござる!?離すでござるよ〜>▽<;;」

「剣心・・俺・・・お前の事が・・その・・す・・・す・・」

「ちょ・・っ・・左・・左之!?」

「す・・・」

「・・・え・・。・・・・す・・・・?」


グギュウウウ・・・・。(←腹の音)

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」



みいーーん  ミン・・ミン・・

微かな蝉の鳴き声。

チリン・・リン・・リ・・ン

軽やかな風鈴の音。

そのどちらもが、一度に静寂を迎える。

誰か・・・この静けさをどうにかしてくれええええ!!!(左之助の心の叫び)



先に静寂を破ってくれたのは剣心だった。もぞもぞと俺の下から抜け出して
にこやかにこう言ってくれた。

「おおっ!!さては左之、腹が減ってたまらんのだな^^メ
よしよし拙者がすいかを切ってきてやるでござるよ♪そこで待ってるでござるよ★」



トタとタと廊下を走っていく剣心。

まだ固まったままの哀れな左之助・・。



              ☆

「ほれ!左之!たんと食うでござるよ!薫殿には後で拙者が何とか言うでござるから」

そういって出してくれたスイカはよく熟れていて、真っ赤な果実が綺麗だった。

左之助は「あ・・ああ。ありがとよ・・・。」
と言ったきり終始無言でスイカにかじりついたのだった。



              ☆

      今の気持ちは好き・・っていうキモチ

      左之の顔が赤いのがかわいい・・。

      拙者の心臓もドキドキいってる。

      す・・の続きを心に留めておいてほしい。

      そして今度はスイカじゃなくて、好き・・のキモチをお前に・・・。

            

                     <END>

     (おまけ)―その年の秋。二人はキスを交わしました。

            そしてそして・・・・・−





                 あきなから城さんへ★

    こんにちは城さん^^小説が無事出来ました☆

    楽しみに待っててくれてほんまにありがとうです★(ああっ、つい関西弁に・笑)

    季節に合わせた設定で書いてみました。
   
    今年の夏もそろそろ(やっと)終わりそうですね♪

    あれからいろいろ考えてるうちに題名も内容も少し変わってしまいました(笑)
    
    ひど い駄文ですが受け取って下さると嬉しいです〜♪

    城さんの左之助はいつもほんとにかっこいいです>▽<

    あきなの左之助もかっこよく ・・と思ったのに アホっぽくなっちゃいました〜☆

    (斎藤一氏に言わせれば「阿呆が・・」と言われる でしょう・笑)

     あきなはいつも城さんの応援をしております>▼<



                        



                 城からあきなさんへ★

     かわいらしい小説を頂きまして、どうもありがとうございます!
     まだ「恋」に発展しないふたりの気持ち…そして
     「好き」という感情がとても初々しく感じられますね。
     でも腹減った〜〜と騒いでみる左之助は、な〜んだ、しっかり「恋」の予感…♪
     「綺麗だ…剣心…」なんて、なんて、なんて、左之助がかわいらしいんでしょ。
     間近で顔を覗かれちゃったら、そりゃ困る〜〜!ですね。
     でも腹の虫が鳴ってくれたから…まあ。
     次回は左之助、ちゃんとシチュエーション整えてから告ることにしましょう〜♪
     でも剣心も、ちゃあんと「好き」という感情に気が付いているんだ。
     ああ、剣心もかわいらしいデス…

     この続きが読みたい〜!とリクエストしておいたので
     きっと次回には「初めてのチュウ」が見られることでしょう!
     ええ、見せてね!
     あきなさんの、かわいらしさがそのまま出ているような小説でしたね〜

     ぜひ次回作にも期待して!
     ヨロシクだ〜、あきなサン♪

            こちらこそいつも城を応援してくれてどうもありがとう!
            私もあなたを応援しています!