異国でのクリスマスは…
  
 白金ペンギン

 19世紀。
凍てつくヨーロッパの12月に、しんしんと雪が降る。
すでに辺りは一面の雪景色と変わっていた。
「もっと火のそぱに寄ったらどうだ、サノスケ」
声を掛けられた相楽左之助は、ワインを口に含んだまま振り向いた。
あかあかと燃える暖炉。床の敷物。
外の寒さと対照的に、家の中は明るく暖かい。

 左之助は、この家の主であるレナードの、青い瞳と金髪を見た。
「悪かったな。家族で楽しく過ごすクリスマスに押しかけたりして」
「何言ってるんだ、招待したのはこっちだぞ? 女房の料理はどうだった?」
「ああ、最高だ。奥さんも子供も、お前にはもったいない美人だし」
「オレのもんだ、やらんぞ」
 2人は顔を見合わせて笑い出した。
「ワインをもう1本どうだ?」
レナードは言いながら、妻が立ち働く台所に向かう。
左之助は暖炉の前に移動し、椅子に坐り込んだ。

港で荷役の仕事をしていた時に知り合ったのがレナードだ。
彼の父はたいそうな浮世絵好きということで、日本人である左之助に声を掛けてきたらしい。
すっかり親しくなって、本来家族で静かに過ごすクリスマスに左之助を招待し、
暖かい手料理でもてなしてくれた。
元来気のいい男で、少々太り気味の明るい妻と、
天使のように可愛い娘を「俺の宝」といって大切にしている。

左之助は少し酔った心地好さに、椅子の上で身体を伸ばした。
薪のはぜる音が響く、暖かい家。和やかな家庭。
左之助は、ふと彼方の家庭を思った。
今頃はもう、子供の1人2人はいるだろう、剣心と薫の家。
そういや、あの道場は本当にあいつの家になっちゃったんだな・・・。
左之助はふと微笑んだ。
日本を出てから、もう何年経つだろう。きっとあいつは嬢ちゃんと結婚して、
家庭をつくり子供をもうけ・・・。
これで良かったのだ、と、左之助は思う。
自分と違って、剣心は、家庭を育んでいくタイプの男だ。
女房子供に振り回され、あくせくしながら、その中で自分もまた幸せをつかめる男だ。
だから・・・。  


 左之助は赤く燃える暖炉の火を見た。
 俺はどうなんだろう、とふと考える。

 広い世界を欲し、新しい何かを求めて、ここまで来た。
 あきれるほどに違い、また、驚くほど似通った人と自然と大地を知った。
 自分はどこまで行くんだろう−−−。

 広大なアメリカ。
 海を隔てた、古い古いヨーロッパ大陸。

 そしてたぶん、どこまででも。世界の果てまで。 
 いや、もし許されるなら、あの星々の世界へまでも。

 ・・・そして。
 そして剣心。
 いつかまたお前に会ったら、俺はいろんなことを話そう。
 この広い、美しい世界のこと。愛すべき人々のこと。
 お前にそっくりな、お前の子供を抱きかかえながら。
 その時俺は、きっとどれほど幸福で満たされていることだろうか。

「サノスケ。とっておきのワインだ、飲もう」
レナードがドアを開けながら入ってくる。
左之助は振り向き「おう」と、明るい笑顔を見せた。




白金ペンギンさんが書いて下さった
放浪左之助ヨーロッパクリスマス物語(笑)
でも!
ホントにこんな事がありそうな、リアルな素晴らしいお話で大感動!
そして
さりげに剣心を思い出す左之助が
ほんとに暖炉の前にいそうで
ほほえましいお話でした♪