曼珠沙華
  何奴 仁












「また・・・・来たよ。」

一人の剣客が一つの小さな墓の前に、立っていた。
その墓は他のと比べれば随分小さかった。
この墓に眠る者がどんな気持ちで永遠の眠りについたか・・・
分かるものは、少ないだろう。

「去年は十年ぶりだったが、今年は一年ぶりでござるな。」

桶に汲んだ水を柄杓でゆっくりとかける。
日が当たって、輝いて見えた。

維新を迎え、平和な京都。
たとえそれがカタチだけだとしても、自分がいた頃よりはましだ、と
剣客は思う。
隠されていた左頬の十字傷も、この墓の前では隠す必要などない。
ついさっき買ってきた花を添えると、少し華やかになったような気がする。

十字傷に手をあてて目を細める。

「すまなかった・・・」

線香を束ねて火を付ける。

今まで来なかった分と清里殿の分だと言って
片膝を付いて手をあわせる。

線香の匂いが辺りに広まる頃、剣心の記憶の中の巴が姿を現す。
閉じていた目を開けて自分だけの巴に微笑んだ。




             「拙者はもう、うずくまったりはしない。」
             『・・・えぇ、分かってます。』
             あの時のような笑顔で巴が言っている気がした。







立ちあがると刀がチャキリと音をたてた。
「大切な人がいるから。」

無くしたくない、大切な人・・・
−巴が笑ってくれたあの日から今日まで巴をみることなんてなかった。
「きっと、これが本当に最後でござるな。」

苦笑して帰ろうとすると、自分の影にもう一つ、自分ではない影があった。
緋色の髪を翻してふり向くと悪一文字を背負った男が笑って立っていた。
剣心はもう一度巴と向き合うと言った。

「拙者の大切な人でござる。」
もうそこには剣心の記憶上の巴もいなくなっていた。

大切な人はもういるから。

「さぁ、左之、帰るでござるよ。」
左之助はニッと笑うと剣心を見た。
「どうしたでござるか?」
キョトンとした剣心に左之助が嬉しそうに言った。
「オメェ、もう“もどる”なんて言わねぇで“帰る”っていうから。嬉しくってよ。」

十字傷を隠すことも忘れ、“緋村剣心”は言った。
「皆がいる場所が、拙者の居場所だと思っているでござるから。」
それを言ったのは、殺さずを誓った“緋村剣心”だった。


左之助は嬉しかったのだが、一つ不満に思った。
それは剣心が「皆がいる場所」と、言ったからだそうな。
このあとそのことを「左之のいる場所」に訂正させたのは言うまでもない。













  
  DEAR城 みづき様

  このたびは仁の小説を受け取ってくださいまして
  ありがとうございました〜♪
  題名から曼珠沙華という季節外れの言葉となってしまいました;
  お彼岸になれば剣ちゃんも巴嬢のことを思い出すのでありましょう。
  巴嬢はまるで彼岸花のようっと思うのは仁だけでしょうか。
  剣ちゃんにとって辛いことでもありま しょうが
  なにせ剣ちゃんには左之助の“愛”がありまするから
  大丈夫でしょうなぁ (*^^*)

  最近は寒くなり主婦(剣ちゃん)もおさんどんが大変でしょうなぁ・・・
  みづき様もお体にはお気を付けくださいね☆
  これからも応援していますので(^U ^)                                      

        FROM→何奴 仁




  何奴 仁さま♪

 今回はフル・スロットルに素敵な小説を頂きまして
 どうもありがとうございました。
 彼岸花を見て、巴さんを思い出す剣心…
 ええ、私も同感です。
 短かったふたりの生活ですが、
 私はあのふたりはとても幸福に過ごしていたのではないかと思います。
 結果的にああいうふうになってしまいましたが…


 そして今の生活には、剣心にとって頼れる左之助がいることが
 これまたとても幸福に思えて仕方ありません。
 「そういう剣心」だったからこそ、「あの左之助」が必要だと思うのです。
 そう思いながら、私もたくさんの作品を書き続けています。
 仁さんと同じ気持ちです。
 いや、フル・スロットルに来てくれる人達、皆そう思ってくれているでしょう。



   素敵な作品をお寄せ下さいましてありがとうございました。
   そしていつもサイト&本を応援して下さってどうもありがとう!
   彼岸花に、巴さんの下駄を置いたような
   そんなイラストと組み合わせてみました。
   ぜひまた次回も作品をお見せ下さいませ。


            城みづき 拝