真白き雪の彼方
「おぎゃあ〜!」
別の部屋でいらいらと妻の出産を待っていた上下衛門は大急ぎで産室へと走った。
「男の子ですだよ。大ーきなりっぱな赤ん坊だ。ホレ!」と、
産婆が手渡してくれた「自分のこども」を上下衛門はあぶなかしげに抱き、
おそるおそるその子供の顔を覗き込んだ。
「これが…?オレの子か…?」
顔を真っ赤にしながら大きな声で泣き続ける男の子は、
母親の菜々芽によく似た真っ黒い髪をしており、
大きなサイズで生まれ、大きな声で泣く元気さは、
父親の上下衛門と初対面にして張り合う根性をうかがわせる。
「あんた…男の子だったよ…」
「ああ!菜々芽!よくやったな!嬉しいぜ!オレ達の子だな!」
「ええ…」
さすがに疲れたのだろう。
菜々芽がか細い声で答えた。
「でかしたな。疲れたろう…」
上下衛門は菜々芽の汗ばんだ額にかかった髪をやさしく払ってやる。
腕の中の赤ん坊は大きな大きな声で泣き続けている。
「そうか…お前が…オレの息子なんだな…」
と、納得するようにつぶやく上下衛門を見上げる菜々芽は
満足そうにほほえんだ。
「おう!雪の日に生まれた男だ!元気に、まっすぐ育てよ!」
上下衛門は泣き続ける赤ん坊を力強く抱きしめた。


同じ日、京都にも雪が降った。
「わ〜!師匠!ゆき!ほら!ゆきがふってきたよ〜!
つもるかなあ?つもるとイイなああ〜!」
「おい、剣心!今から急いで川へ行って水をくんでおけ。
明日になったら雪が積もって川へ降りられなくなるかもしれないからな。」
「は〜い!師匠!行ってきま〜す!」
剣心と呼ばれた少年は大急ぎで桶を手に走って行った。


 この日信州に生まれた上下衛門の長男「東谷左之助」
 京都で飛天御剣流の修業に明け暮れる、少年「緋村剣心」


まさか雪の向こうに運命的な出会いがあるなど知る由もないふたり。
雪の降る日に生まれた左之助と、その雪をも人の血で赤く染めた人斬り抜刀斎との出会いは、
それからまだ20年も先のことであるが。




            左之助お誕生のお話…(笑)
            きっとこんなじゃなかったかなってネ♪