西の大地

「こいつは剣心だ。オレを追って日本からやって来た。
…そういう訳だから、頼むな」

一瞬場が緊張する。
剣心には左之助の話す現地の言葉が分らない。
「コイツはナリはこんなだが、剣を持たせるとえらく強い。
オレはコイツに負けたんだ」
更に場が緊張した。
「まあ…よろしく頼むわ…」
皆が一斉に目礼した。

現地の男衆と女衆…合わせて50〜60人はいただろう。
左之助がこんな集団の長になっているとは思わなかった。
しかし異国の、流れ者であったはずの左之助がここまでになるのに
どんなに苦労したかはうかがえる。
左之助は進んでリーダーシップを取ろうとするタイプではない。
が、結果リーダーになってしまうのだ。
判断力の鋭さ、敏速な行動、面倒見の良さ、笑顔…
どれをとっても人を魅了する。
男も女も…だ。
赤い髪をしてぼろぼろの着物を着た、小柄な男…いや女に見えたかもしれない。
ワケの分からない外国人がリーダーを追ってやって来た…のだ。
しかし左之助の口調と剣心の十字傷が、ふたりがただならぬ関係であることを充分に表していた。
それだけの言葉で、左之助は一同に知らしめたのだ。
「コイツに手を出すな」と。


「さて…まずは身体を洗って着替な…これを」
「え?これを着るのでござるか?」
「いいぜえ。着物よりずっと動きやすいし。オメエに似合いそうだ…」
剣心はその異国の服をしぶしぶと受け取った。



他の馬よりも遙かに体格の良い黒馬にまたがって
左之助と剣心は広い大地を駆ける。
異国の風、異国の空、地平線…
剣心は初めての景色に驚くばかり。
「あっちがモンゴル…こっちがトルコ…広いだろう…」
左之助の示す方向に目を向ける。
日本では考えられない広い空と大地。


左之助が剣心を見て微笑んだ。
「ほんとうに…お前なんだな…夢じゃあなかろうな…」
「さの…」
左之助のたくましい腕が剣心を抱きしめる。
剣心は胸が熱くなった。
この瞬間を今までどんなに夢見ていたろう!
日本を離れて、何のあてもなく彷徨う旅の先に
いるとは限らなかった恋しい人だ。
それがこうして巡り会えたのだ。
熱い涙が剣心の頬を濡らした…



西の大地で再び巡り会えた、運命の人。

これからも、ともに。
いつまでも、ともに。











「西の大地」 城みづき
ゆーみさんへ♪

「いつもとちょっと違う左之助と剣心が見たいな〜」という
ご要望にお応えして
こんな、初めてのヘンテコ絵を描いてみました。
おいおい、左之助が三つ編みじゃないですか。
剣心もターバン…
どんな服着せたらよいか、悩む悩む…
とりあえずは西アジア風…
いろんな色塗らなくちゃ…(^-^;と必死でした。
ですからつっこまないでね〜(泣)

フル・スロットルの連載小説第1弾「愛は時空を超えて」では
左之助を追って大陸に渡った剣心は
左之助に会えなかったかもしれないという
裕のモノローグで終わっています。
が、もし会えていたら?という設定ではどうでしょうか?
西の大地で再会したふたりは
どんなにか幸せだったことでしょう!

そんな気持ちを込めて描いてみたんです。
いつもと違う…あは〜、変わりませんね、ちっとも。
結局ラブラブになってしまいました。
まあ、異国の服をお召し頂きました…ということでOKにしてね。

設定はやはり大陸の西。
描けませんでしたが、黒馬にふたりでまたがっているというスタイル…のつもり♪
だったら左之助の手に手綱が無くちゃね、はは…(^-^;
ホラ、星霜編でもそういうシーンあったじゃないですか。
そういや、コレって星霜編への私の抗議かもしれないな…


こんな絵でよろしい?ゆーみさん♪
一生懸命描いたのよお〜
リクエスト頂きまして、どうもありがとうございました。
私も幸福でございました。