大晦日も…

ごおーん…
「除夜の鐘…だよ…さの…」
「ああ…今年ももう終わりだなあ…」

いつものように夜を過ごす左之助の部屋。
真冬というのに暖をとれるものは何も無く、
ただ互いの身体を抱きしめ合う事しか出来ない。
安物の着物やうすっぺらな布団より、そのほうがずっと暖かいのだ。
  
   心にも…。
   身体にも…。

情事のほてりが冷めた今、互いの体温を逃さぬようにしっかりと抱きしめ合い、
かろうじて綿の入った掛け布団をはおりながら、
窓の外を眺めていた。


「108つの鐘…人間の煩悩の数だってな…」
「おろ?良く知ってるでござるな、さの…」
「知っててワリイかよ!」
「いや?そんな事ないけど…」
剣心はくすっと肩をすくめて笑う。
「お?何でえ?言えよ、おい…」
左之助は含み笑いをする剣心をきゅっと抱きしめる。
「いやあ…108つあるさのの煩悩は…ふふ」
「ぜ〜んぶ、「やりてえ!」だろうなあと思ったな!」
「当たり!」
「がはは!当たりだあ!」
ふたりは声を揃えて笑った。
 
   …さの…俺の煩悩も…全部それだよ…

剣心は心の中でそっとつぶやいた。
声に出して言ってやるとさのがつけあがりそうだから!!

そのかわり
「さの…」と、
さのすけの顎を取り、そっと唇を合わせた。
ふたりは静かに目を閉じる…



窓の外には除夜の鐘が流れている。
冷え切った空からは、ちらほらと白い雪が舞い始めた。
しっかりと抱き合い、再び情欲の虜となっていったふたりは
その雪を見ることはなかった…