Present for You




街はもうすっかりとバレンタイン!
どこのショップもハートマークが溢れ、デパートのお菓子売り場もチョコ一色だ。
そしてたくさんの女の子達…
大好きな人に贈るチョコレートにプレゼント…
寒い寒い冬の、でもわくわくなイベントだ。

そんな渋谷の街を歩いている男ふたり。
左之助と修だ。
いつもなら、左之助の隣にはジョシュア剣心が居るはずだよね?
なんで、修と歩いているのかな?

「さのさん!
今度の役、楽しみですよね!
一緒のドラマなんて、こんなスゴイこと、ナイですよ!」
「まあな。芝居ではあったが、TVドラマは初めてだもんな」
「ええ、ボクもうたくさんの知り合いに連絡しちゃいましたよ。
だって初めてのTVなんだもの…」
「そうだよな〜!修のTVデビューだもんな!それにオレが一緒だなんて、
こりゃあ 『ジャジャジャジャ〜ン♪』だな」
「…?なんですか?それ?」
「バカやろ!ちゃんと聞けよ。『運命』だろうが!」
「…!ぶっ!」
「こら!笑うな!ちゃんと分からないお前が悪いんだ!ふん!」
「だって…さのさん、音痴なんだもん…くすくす」
「…!それ以上言ったらコロす」
「はいはい〜、っとところで今日はジョシュアさんはどうしました?」
「連れて来るかよ。台本の打ち合わせに。
今頃部屋でまた『新選組』見てるんじゃないのか?」
「ああ…ちょっと可哀相でしたね。落ち込んでいましたものね。
その後どうですか?」
「…そういう運命に身を投じたのだ。だからアイツらは幸福だったんだよ…と
言って聞かせた。
しばらくは悲しんでいたようだったけれど、落ち着いてきたみたいだ。
それが『武士道』なんだからな!とマトメたからな。
納得した様子だがねえ。ほんとに分かっているんだかどうだか…」
「ジョシュア剣心さんにとっては、衝撃的だったのかも…ですね。
でもあれが新撰組なんだし…」
「そうだな…でもいいドラマだったから、オレは満足してるんだ。
オヤジにも、ちょこっとだけ褒められた」
「それはスゴイことですよね!
さのさん、オヤジさんに役者稼業を反対されているんですからねえ」
「もう、すっかりと諦めたんじゃネエか?
それとももう長男は居ネエものと思われてるのかもな!
あはは!オレはそれでもいいけどヨ」
「でも今回のドラマはまた違ったものだし…
きっとオヤジさん、TV見ますよ?」
「ふん…そんなのわかりゃしねえが…でもまたバイトが少なくなるからなあ…
剣心に頼らなくちゃならねえのが…なあ…」
「だいじょうぶですよお、ジョシュアさんなら!
それに、きっとまたチョコをくれるでしょ?」
「おお!チョコ!
あの野郎、去年はオレより多く貰ったんだぜ?」
「知ってます…オレが運んだんですからね」
「ぶ!まだやっているのか?ネコの運送屋」
「やってますよ〜。ボクも仕送りナシで大変なんですから〜」
「でも仲良くやってるんだろ?ちえちゃんと♪
お前だってチョコ貰えるじゃないか!♪」
「はい!もう楽しみなんです。
デートの約束もしてるんで〜♪」
「オレたちもデート出来るかな…?その日はバイトが日勤だが…」

そして事務所に着く。
ここで、ふたりは新しいドラマの打ち合わせを始めた。



「ぐすん…ぐすん…」
部屋ではジョシュア剣心がひとりでビデオを見ていた。
去年の大河だ。
新選組。
何度見ても泣いてしまうのだ。
志半ばで散った沖田を見ていると。
そして夢の中で会えた、あの沖田の笑顔と藤原沖田くんのイメージが重なり
どうしてもあのホンモノ沖田を思い出してしまうのだ。
(「浅葱色の出会い」参照)

あの、咳をしていたオキタソウジ…
優しく、そして強くオキタを抱きしめていたヒジカタ。
あのふたりの運命が、あの先にこんなことになるなんて思わなかった。
左之助に丁寧に話してもらって、自分でも納得したように思えたジョシュアだったが
どうしても泣けてきてしまう。
可哀相…とかいうのじゃない。
これが彼らの選んだ道なのだと思えば、楽にもなる。
でもそういうものと違った…そう、彼らの神々しいまでの決断と行動が
羨ましくも悲しくて、ジョシュアにはたまらなかったのだ。
「オキタ…ひとりぼっちで寂しそうだったでゴザルんです…
きっとヒジカタと一緒に死にたかったハズ…ぐすん…」
まだまだ本当に立ち直れないジョシュア剣心だった。

そこに階段を上って来る足音が聞こえた。
きっとさのだろう。
修も一緒かな?

「おっ帰りなさいでゴザルんです〜、さの♪」
ドアを開けてにっこりとする。
「あ!た、ただいま!
修も居るぜ…」
「修〜!ハロー!いらっしゃいでゴザルんです〜。
久しぶり、ネ。元気してました?さ、英語でドウゾ」
「あ、ハロ〜!ジョシュア。ハウアーユー?アイム、ファイン」
「GOOD!いい発音になりました。
ちゃんと通じますヨ〜」
「はは…サンキュー」
修は作り笑い…
「…修…まあ、入れよ」
「あ、はい…」
「ドゾ入って。散らかっててセマいケド…」
「あはは、くそ!いつものことだがな〜!」
左之助も苦笑いだ。


左之助と修の口調は歯切れが悪い。
先ほどまでこのドラマの台本を読みながら、剣心になんと説明しようか?と
悩んでいたからだ。

台本をもらって打ち合わせをした。
おんながらみの、ドロドロとした昼メロふうだった。
前後編の、合計4時間もの。
なかなかに大作で、有名俳優も多く出演し、左之助も3番手ぐらいの役どころであり、
ギャラも結構良さげである。
地方ロケなどもある。
伊豆だ。
左之助は主人公の息子だが、どうにも箸にも棒にもかからない放蕩息子役。
だが色男でおんなにモテる。
そのおんな恋人に横恋慕する親友役に修。
まあ、ここまでは良い。
なんとなく出来そうな役だしね。
ふたりにはぴったりな役どころかもしれないし、プロデューサーにも
「なんだ。君たち友達同士なの。じゃあこれはイイと思うよ?
感情移入できるんじゃないかな?」などとも言われたし、ふたりにも納得できた。
ところが…

「ベッドシーン」が有ったのだ。
それも濃厚な、ヤツ。
加えて、横恋慕した親友「修」が、その女の子を無理やりにヤッてしまうという
ショッキングなシーンまであった。
その後、左之助と修は殴りあわなくてはならないのだ。
あ、役の上で、ネ(笑)
だが…!

かねてからの約束。
左之助はジョシュア剣心に言われていた。
「イヤですから〜。ベッドシーン。それは辞めてでゴザルんですよ?
いいですか?さの!NOですから〜」

剣心の気持ちも分からないわけではない。
当然かも。
芝居の中であっても恋人が他のおんなを抱くなんて、とんでもない話だ。
だが左之助は俳優のたまご。
こんな役だってやってくる。
「イヤです」なんて断ったらもう2度と役は回って来ないかもしれないのだ。
ましてや今回は修も一緒だ。
オレが何か言える状態じゃない。
修のデビューを、華々しく飾ってやりたいじゃないか。
オレが共演出来るんだ!
なんとラッキー!と、祝いたい。
だが、どうしたらいいのだ?

「さのさん…これ、どうやって説明するんスか?
ジョシュアさん、怒りませんかね…?」
「…うん。剣心が嫌がるに決まってるからな…」
「でも…いい役どころですよ?さのさんのは。
ボクもこの役、やりたいです。さのさんと一緒に出来るなんて、超ラッキーだし」
「ああ、そうだ。そうだよな。
やっぱり剣心には納得してもらうしかない、な」
「…はい…」
「お前の方はどうなんだ?ちえちゃんは平気か?」
「ああ、大丈夫ですよ。オレの、そういう『汚れ役』も見たいから〜♪って
普段から言ってますからね」
「そうかあ…いいな…」
さのはふう〜っと空を仰いでため息をついた。
「本物の女だから、イイのかもなあ…それに日本人で理解も有る。
剣心は、こう…焼きモチ焼きだし…半分アメリカ人だし、
怒るとハンパじゃねえからなあ」
と言ってからゴホンゴホンと空咳をしてごまかす(笑)
「かわいらしいっすよ。そういうところも、ね。
だからよ〜く説明してあげればいいんじゃないですか?
お芝居なんだから、気にするな、ホントの恋じゃないよ〜、とか言って」
「むむ…分かってくれると思うか?あの剣心が…?」
「大丈夫っす”!ボクも一緒に居ましょう」


「さ〜、あったかいコーヒー入れました。
修、プリーズ♪」
「あ…ども…」
「今日は打ち合わせ、あったのでショ?
どんな役だったんですかあ?
さの?修も役、もちろんアルんでショ?
ふたりが一緒のシーンとか、あるんでゴザルんですかあ?」
にこにことジョシュア剣心は笑いっぱなし。
さのと修が一緒にドラマに出られるのを、誰よりも喜んでいたジョシュアだった。
「ふたりで一緒のドラマなんて、ワンダフル!
いいね〜、いいね〜!
それも修の、TVデビューなんて、サイコ〜でゴザルんです!
きっと皆に、大うけね?
ハンサムふたりで、さ〜!うふ♪」
という調子だったから…

「でで?タイトルは?
さのの役名は?ナニ?」
「えっと…
ナンだっけ?」
「『牡丹色の復讐』ですよ、ジョシュアさん」
修が慌てて返事する。
「ナニそれ?ひょっとしてあの昼ドラみたいなヤツとかですかあ?」
ジョシュア剣心は某ドラマ℃「牡丹と薔薇」を知っている。
「修は何て役なの?」
「あ、ボクは、さのさんの、親友役で、『健一』です〜(汗)」
「親友役?それってオキタとヒジカタみたいな、やつですか?」
「あ、そう、かも。そうじゃない…かも…あれれ?分からないなあ〜、えへ」
「…修…日本語、分かりませんでゴザルんです…
もう一回言って?ねえ?」

「剣心。
良く聞けよ〜!オホン。
これから説明してやるからな。
『牡丹色の復讐』ってやつ、な。
まず始めに〜。
オレの役名は「本条アキラ」だ。
お金持ちの、放蕩息子」
左之助が元気に言い放つ。(ちょっとカラ元気)
「お金持ち?
うひゃあ♪さのと全然違うの、ネ?
ホウトウってナニでゴザルんですか?」
「……オレ自身みたいな…ええと…箸にも棒にもかからない、ロクでもない息子」
「What?さの?それ、意味分からない…ロクってナニ?シックスのこと?
6番目の息子?子沢山なのね?」
「ああ?そうだ、ちょうどお前みたいなヤツと似てる。
金持ちで遊んでばかりいて、女にモテてイヤ〜なヤツ」
「No!ボク、遊んでばかりいませんでしタ。
ちゃんとお仕事してマシタ。
危ない目に会ってケガもして…さの!
それにブラザーいない!
それにそれに拙者、イヤなヤツなんですか?!
ひ、ひどい…!」
「あ!ち、違う。
違うんだ!」
「確かに、拙者、まだお箸が上手に使えまセン…
おドンブリに入ったゴハンしか、うまく食べられナイ…
お箸にゴハン、上手くかかりませんデス…」
泣きそう…なジョシュア。
「違うってば。そうじゃない、剣心!」
「だって、さの、分からない。
分からない〜〜!」
「おい、修!
何とかしろよ!英語で説明してやれよ〜〜!」
「無理に決まってるでしょ?
おいら、英語ってず〜っと通信簿2以上になったこと、ナイんですからね」
「自慢するなあ!オレだってそうだ」
「What?ツウシンボ?ああ〜!オーマイガッ!
日本語、難しすぎ〜〜!あ〜!」
「お、落ち着け、剣心。
で、修とオレ、殴り合いもあるんだぜ?
はは、可笑しいだろ?」
「なんで〜?
ケンカになるの?
どうしてケンカしなくちゃならないの?」
「女の子を取り合うことになるんですよ、さのさんと」
「ええ?それって、まさか…?」
「剣心。すまん。
女の子と絡みシーンがあんだよ、オレも修も」
「ぎょ!カラミってもしかして、アレ?
じょっとして、とと違った、ひょっとしてベッドシーンなの?」
「そうなんだよ。
でもさ、ほら、チョットだけよ?になってるから。
大丈夫だよ、な?」
「What?ナニ?『チョットだけ?』分かりません〜〜!
日本語!難しい〜〜でゴザルんです!
さの、ちゃんと説明してえ〜!」

もう泣き出しそうな、ジョシュア。
さのも修も大パニック!


ああ…もっと優しく説明してやろうと思ったのに…
と、さのはがっくりとしていた。






      続きは近日中に〜♪一応バレンタインものなんですけど、これ。
                              城みづき



                    
← クリックで後編に続く〜